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最近新聞紙上をにぎわせている薬理学の世界的権威であるN大学のH教授や、エイズ問題のT大学のA教授は、その地位を利用して薬剤メーカーと癒着して、莫大な献金を引き出したと言われています。
このような事件が報道されるところで、インディ・ジョーンズに主演したハリソン・フォードが主役の「逃亡者」という映画を先日見ました。
心筋梗塞の新薬として発売を控えた薬に、致命的副作用があることをハリソン・フォードが演じる医師が突きとめたところ、彼の奥さんが自宅で殺されてしまうのです。
しかも、彼は犯人にしたてられたため、警察から逃げながら真犯人を探すというストーリーでした。
結局、真犯人は製薬会社と癒着した同僚の医師が、新薬の副作用を隠すために彼をおとしいれて、金や名誉を得ようとしたのでした。
この映画、たいへん面白い、手に汗握る展開だったのですが、じつはこの映画は、このような事件が実際にあったのを映画化したそうです。
現在のように、これだけ頻繁に薬剤メーカーとの癒着が問題になるのは、医療体制に問題があるからです。
それは、大学教授の持つ権限が余りにも大きいことでしょう。
医師の世界は、まだまだ封建制度が明らかで、「白い巨塔」に描かれている絶対的権力は、未だに変わることがありません。
教授の意向は病院内の薬の採用のみならず、たびに、背筋の凍る思いをしていらっしゃる方もまだまだいらっしゃることと思います。
大学の関連病院といわれる、医局から医師を派遣してもらっている病院、数十の病院の薬の方針にも影響します。
なぜ影響するかといえば、先に述べたように教授がすべての人事権を握っているからです。
そのため薬剤メーカーにとっては、教授の意向が大事であり、うまく取り入れば関連病院すべてで採用の便宜を受けることができるからです。
薬剤メーカーにとっては、ゴマをすらざるを得ない状況ともいえるでしょう。
しかし、その陰でそういった事情もわからないで、薬を投与される患者さんの人権はどうなるのか、これらの教授の頭に患者さんのことがどれほどあったのかは疑問です。
幸いにして私の知る外科の教授にはそのような方はおられません。
しかし、いかにもお山の大将的な、現代風に言えば「カリスマ教授」が多くおられました。
数年前にテレビキャスターの逸見さんを手術した、当時「神の手」の持ち主として騒がれたとT大のH元教授はじつに豪快な方でした。
学会で何度もお見かけしましたが、大変威勢のいい拡大手術ばかりを手がけることで有名でした。
学会では往々にして、癌に対する手術は大きければ大きいほど、威勢よく、かっこよく聞こえるものです。
それはそうでしょう、誰かが癌が血管に浸潤しているから切除不能と言ったら、「それは血管も切除して、再建すればとれる」とか、「技術的にはこうすればとれる」と言うと、学会場のあちこちから、それは勇気ある手術だという声が上がってくるわけですから。
H教授はその最たるもので、いつも前向きで、発展的な手術方法を考案され、学会で発表しておられました。
私もその積極的な姿勢には敬意を表していました。
ある時、胆嚢癌の手術で肝動脈と門脈、胆管を一括で取ることにより、切除率が向上することを学会で示された時には、私もアシと驚きました。
私も考えついた手術でしたが、あまりにも危険と考え、手術の検討会などでも提案する気にもならなかった術式だったからです。
しかし、その後の発表では、その手術には術後合併症が一○○%発生し、手術に耐えて退院できる人がほとんどいなかったと聞いて、「ああ、やっぱり」と思ったことが印象的でした。
麻酔管理、術後管理の発展により、外科手術は拡大の一途をたどっていた時代でしたから、拡大手術、拡大手術と唱えることが、時代の趨勢でした。
しかし、この時、同時に思ったことは、そのような手術を受ける患者さんの人権は、どこまで尊重されていたのだろうかということです。
高名な大学の外科教授にこの術式がいいですよと言われたら、たとえ、かなり危険が伴う手術であっても、誰がことわれましょうか?結局、この手術は惨憎たる成績のため、現在は縮小方向に向かっております。
では、一般の病院では患者さんの人権問題はどうなっているのでしょうか?規模の大きな病院においては、決められた時間で、多くの患者さんをみなければならないので、上層部からは〃患者をみる〃のではなく〃患者をこなせ〃という指示が出るほどです。
病院には病院の言い分、患者さんには患者さんの言い分があります。
その間に入った医師側には、かなり神経がすり減る毎日であることは確かです。
全てが流れ作業となり、その一部分だけを任される「大病院の外科医」という職業は、スペシャリストではありますが、ある意味では職人です。
私はその職人的要素が強いということに、だんだん疑問を持ち始めたのです。
そして、それが私を新しい医療の形に目覚めさせるきっかけとなったのです。
外科医は手術がすべてではないこのように患者さんの人権を考えるようになった私は、それまで自分が積極的に行ない、たくさんの論文を書いてきた科学的な考え方について疑問を感じ始めました。
生存率に少しばかりの向上がみられるからこの方法がいい、と勧めてきた自分の姿勢に大きな疑問を持ち始めたのでした。
術後管理で苦労して一本一本の点滴にさえ心を配り、手術の方針を決めるのさえ悩ませるような、一人の人間としての患者さん。
そして患者さんをとりまく社会的問題まで視野に入れた治療の必要性を感じるようになっていました。
さらに、患者さんの心の状態、性格が病状にたいへん大きく影響するということを、数多くの患者さんと接するうちに悟りました。
そして、患者さんが明るく、笑って退院できることの方にウエイトをおくことが、手術をうまくやり遂げることよりも、むしろ重要だと思うようになりました。
そうしているうちに、私は大病院での外科医という仕事だけにとどまらず、今までの経験を生かしながら、もっと医療を幅広くとらえ、心の通った治療ができないかと求めるようになりました。
それは西洋医学という枠にとらわれず、内科・外科という守備範囲にもとらわれない治療に広範囲に臨むことです。
実は私は、学生の頃から、西洋医学と共に東洋医学にも興味を持っていたのですが、西洋医学に傾倒すればするほど、その限界を知ることになり、その時点で東洋医学を学んでいこうと決心し、独学で学んできました。
そしてその時に、知人と共に東洋医学と西洋医学の長所を取り入れた理想的な治療を目指そうということになり、Nビルクリニックに勤務することになったのです。
手術が必要と言われたら切るか.切らざるかは永遠のテーマ読者の皆さんが病院で検査を受けた結果、手術が必要であると診断されたとします。
そんなとき、みなさんはまず切らずに治す方法がないかと考えるはずです。
どんなに医学が進歩しても、身体の一部を切除するということについては誰でも抵抗感があるのが普通です。
手術することによって完治する見込みのある場合はともかく、そうとは限らない場合は、特に悩むことでしょう。
命に関わる病気の場合や、緊急性のあるときは、悩む時間も与えられないことがあります。
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